八卦掌に思うこと

                50歳代 女性

 

 私は、中国武道「八卦掌」のクラスに入門させていただいて約一年になる女性です。以前から中国武道には興味を持ってはいましたが、具体的な知識がなかったので決めかねていたところ、近所に「八卦掌」と称する教室があると知り、どの様な武道かも分からぬまま入会する事にしました。

 私が中国武道に興味を持っていたのも、日本舞踊を長年勉強し、「腰の入れ方」や「手足の動き」に共通点があると感じていたからです。「舞踊の原点が重心の取り方、足腰の強さにあり」、との思いからその点を今一度勉強し直そうと考えクラスに参加致しました。

 

 最初はまず、内股で重心を決めて歩く稽古ばかりでしたが、予想通り日本舞踊よりも厳しい姿勢の歩き方を要求されました。元々、日本の古典芸能は「お仕舞い」の動きからも明らかな様に、基本は「正しく歩く」事にあります。

三ヶ月ほどすると、新しい手を教えて頂く様になり、重心を決めた上での手足に力を必要とする動きが出始め、「武道らしさ」を感じさせる練習になりました。 半年が経った頃、私の日舞の師匠の都合で他の先生に指導を受ける事になり、稽古を始めたところ、私の動きを見られて、先ず第一にその先生が「捻りが利く」、「足腰は強い」ようですねとコメントされました。

 若い頃、フィギュアスケートやダンスを習ったりした事があったので、足腰には比較的自信があったのですが、年と共に最近は衰えを感じ初めていたので、そのお言葉を頂いた時には、「八卦掌」のお陰ではと感じました。特に「貴女の得意な捻り」と何回か稽古の最中に言われると、八卦掌のクラスで「腰を据えたまま上半身を90度回す訓練」がいつの間にか役に立っているに違いないと感じる様になりました。

 私は歌舞伎舞踊を追及してきたので、この要素は非常に大きいと改めて感じさせられました。「重い衣装、かつら」を付けて重心を保ったまま「体を捻る」動きは至難の技ですが、中国武道は「筋肉を鍛える」と同時に「重心を保つ」訓練になるので最適です。今後もその成果に期待しています。

 

 私は常々、役者の「呼吸」、「気迫」、に注目して稽古をして参りましたので、「八卦掌」の稽古を始めて、歌舞伎俳優の芸の裏には、明らかに武道的な要素が隠されていると感じるにはそれ程時間は掛かりませんでした。 「石橋」もの、(獅子もの)を踊る時にはきっと効果が現れると今から期待しています。「年の割にはすごい」と言われたいものです。 力以上に「気迫」、「めりはり」が伝わるかどうかの勝負だと感じています。

 

 それは、演技の世界のみならず、日常生活にも通じる要素でもあります。特に人を説得しなければならない職業にある企業の経営者達には不可欠の要素だと思います。 「真のリーダーシップ」とは何かを考える時、「気」がどれ程重要な「鍵」となるかを私は常々考えて生きて参りました。日本の政治家の多くが口先と腹にあるものが違う現象に大きな「違和感」を感じる人も多いのではないでしょうか? 違和感とは、「気」が合わない現象からくるのだと思います。 「気」を重んじれば、人の「真」も理屈抜きで受け止められるものです。武道にはそうした能力を自然に養う要素が秘められている様に感じます。

 

 政治家や経営者に不可欠な要素は、「真心をもって人を説得する力」そして、その要素が「願望を目的達成に繋げる」役割を果たす力になるのだと感じます。 「気の交流」には、「発信する力」と「受ける力」が必要です。

 良きリーダーの下で能力を最大限発揮出来る様になるためにも「気」の要素は一般市民にも重要な資質になるはずです。良きパートナーとの出会いも然りです。

 

特に発育盛りの子供達が「気」の要素を取り入れれば、人生そのものに大きな影響を及ぼす事でしょう。思えば、日本には「文武両道」を鍛練する習慣があったからこそ、昔の日本人は心身共に強かったのです。私は昔の日本人にあって、今の日本人に欠けた「気質」がその様なところにあるのではと感じる今日この頃です。

 

 

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